こんにちは!半沢です!
今回の記事では代数的整数論におけるラグランジュの四平方和定理(Lagrange’s four-square theorem)について解説します。
「任意の自然数は\(\,4\,\)個の自然数で表せる」という美しい主張ながら,初等的に証明可能でかなり面白い定理です。
またヤコビの四平方和定理など関連話題も多い定理となっています。
ぜひ読んでいってください。
主張
ラグランジュの四平方和定理
任意の自然数は\(\,4\,\)個の平方数の和として表せる。
例えば
\[\begin{align*}1=&\,1^2+0^2+0^2+0^2 \\\\ 4=&\,2^2+0^2+0^2+0^2 \\ =&\,1^2+1^2+1^2+1^2 \\\\ 310=&\,17^2+4^2+2^2+1^2 \\ =&\,16^2+7^2+2^2+1^2 \\ =&\,15^2+9^2+2^2+0^2 \\ =&\,12^2+11^2+6^2+3^2\end{align*}\]
といった感じです。
ただし\(\,4,310\,\)のように四平方和定理は(順序を除いた)表示の一意性までは保障していないことに注意しましょう。\(\,4\,\)は一意性が崩れる最小の反例です。
発展的な話題ですが,この定理を発展させたヤコビの四平方和定理というものがあり,それによりこの表示の数を求めることができます。
余裕があればヤコビの方も解説記事を書くので,楽しみにしておいてください。
証明
補題1,2により初等的に証明していきます。
別の手法として四元数(フルビッツ整数)を用いた証明もあるようですが,私が四元数についてあまり詳しくないので触れません。要望が多ければ加筆を検討します。
補題1:オイラーの四平方恒等式
補題1:オイラーの四平方恒等式
実数\(\,x_1,x_2,x_3,x_4,y_1,y_2,y_3,y_4\,\)について,次の恒等式が成り立つ。
\[\begin{align*}&\,(x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2)(y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2) \\ =&\,\phantom{+}(x_1y_1-x_2y_2-x_3y_3-x_4y_4)^2 \\ &\,+(x_1y_2+x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3)^2 \\ &\,+(x_1y_3-x_2y_4+x_3y_1+x_4y_2)^2 \\ &\,+(x_1y_4+x_2y_3-x_3y_2+x_4y_1)^2 \end{align*}\]
この補題の大事な点は,整数の四平方和の積は四平方和で表せるということです。
よって,自然数は素数の積によって表されるので,
ラグランジュの四平方和定理を示すためには,任意の素数に対してのみ示せば十分であることが分かります。
この補題1の証明はただ,左辺と右辺を計算して一致することを確かめるだけで良いです。
しかし分かりやすい別証明として,この補題1だけは四元数を用いたものを紹介します。
前提知識として,四元数とは複素数を拡張したようなもので,実数\(\,a,b,c,d\,\)と3つの虚数単位\(\,i,j,k\,\)を用いて,\(\,a+bi+cj+dk\,\)と表されるものです。
ただし積の交換は常に成り立たず,虚数単位同士の積は
\[i^2=j^2=k^2=-1,\quad ij=k,\quad jk=i,\quad ki=j,\quad ji=-k,\quad kj=-i,\quad ik=-j\]
となります。
また四元数\(\,a+bi+cj+dk\,\)の絶対値は\(\,|a+bi+cj+dk|=a^2+b^2+c^2+d^2\,\)です。
それでは証明です。
2つの四元数\(\,x_1+x_2i+x_3j+x_4k,y_1+y_2i+y_3j+y_4k\,\)の積を計算すると,
\[\begin{align*}&(x_1+x_2i+x_3j+x_4k)(y_1+y_2i+y_3j+y_4k) \\ =&\, \phantom{+}x_1y_1+x_1y_2i+x_1y_3j+x_1y_4k \\ &\,+x_2y_1i-x_2y_2+x_2y_3ij+x_2y_4ik \\ &\,+x_3y_1j+x_3y_2ji-x_3y_3+x_3y_4jk \\ &\,+x_4y_1k+x_4y_2ki+x_4y_3kj-x_4y_4 \\ =&\,\phantom{+}(x_1y_1-x_2y_2-x_3y_3-x_4y_4) \\ &\,+(x_1y_2+x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3)i \\ &\,+(x_1y_3-x_2y_4+x_3y_1+x_4y_2)j \\ &\,+(x_1y_4+x_2y_3-x_3y_2+x_4y_1)k \end{align*}\]
となります。
そこで最初と最後の四元数の絶対値を取れば,目的の恒等式
\[\begin{align*}&\,(x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2)(y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2) \\ =&\,\phantom{+}(x_1y_1-x_2y_2-x_3y_3-x_4y_4)^2 \\ &\,+(x_1y_2+x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3)^2 \\ &\,+(x_1y_3-x_2y_4+x_3y_1+x_4y_2)^2 \\ &\,+(x_1y_4+x_2y_3-x_3y_2+x_4y_1)^2 \end{align*}\]
を得ます。\(\quad\square\)
四元数の証明が分かりにくい方は,複素数で同様をやってみることをおススメします。
2つの複素数\(\,x_1+x_2i,y_1+y_2i\,\)の積を計算して,
\[(x_1+x_2i)(y_1+y_2i)=(x_1y_1-x_2y_2)+(x_1y_2+x_2y_1)i.\]
両辺の絶対値を取って,
\[(x_1^2+x_2^2)(y_1^2+y_2^2)=(x_1y_1-x_2y_2)^2+(x_1y_2+x_2y_1)^2\]
を得ます。
証明から分かるようにオイラーの四平方恒等式は四元数の絶対値の積の法則を表していると解釈できます。
補題2
前節の補題1より,素数の場合についてのみ示せば十分です。
また素数\(\,2\,\)の場合は,\(\,2=1^2+1^2+0^2+0^2\,\)で定理は明らかに成り立つので,改めて証明する必要はありません。
そこで奇素数\(\,p\,\)の場合に定理を証明すれば十分ですね。
そのために次の補題2を証明しましょう。
補題2
\(\,p\,\)を奇素数とすると,次の条件を満たす自然数\(\,m\,\)が存在する。
条件: 整数\(\,x_1,x_2,x_3,x_4\,\)が存在して,
\[mp=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2\]となるような自然数\(\,m\lt p\,\)が存在する。
まず整数の集合
\[S_1=\bigl\{x^2\bigm| x\in \mathbb{Z},\,\,0\leq x\leq \tfrac{p-1}{2}\bigr\}\]
\[S_2=\bigl\{-y^2-1\bigm| y\in \mathbb{Z},\,\,0\leq y\leq \tfrac{p-1}{2}\bigr\}\]
を考えます。
この\(\,S_1,S_2\,\)の元は\(\,\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\,\)上で考えてもダブりは発生しません。
なぜなら例えば\(\,S_1\,\)の元\(\,a^2,b^2\,\,(a\not=b)\,\)でダブりが発生したとすると,\(\bmod\,p\,\)上で\(\,a^2 =b^2\,\)が成り立ちます。
このとき\(\,(a+b)(a-b)=0\,\)より,\(\,a=b\,\)または\(\,a=-b\,\)となります。
\(\bmod\,p\,\)上ではなく,もとの整数で考えると,これは\(\,a-b,a+b\,\)のどちらかは\(\,p\,\)で割り切れることを意味しますが,
\(a\not=b\,\)より\(\,0\lt a+b\leq\frac{p-1}{2}+\frac{p-1}{2}=p-1,\,\,0\lt|a-b|\leq p-1\,\)なので矛盾です。
よって\(\,S_1,S_2\,\)の元は合計\(\,p+1\,\)個ありますが,\(\,\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\,\)の元は\(\,p\,\)個です。
故に鳩の巣原理より,\(\,S_1,S_2\,\)は\(\,\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\,\)上で共通の元を少なくとも一つ持ちます。
つまり\(\,x^2=-y^2-1\pmod{p}\,\)かつ\(\,0\leq x,y\leq \frac{p-1}{2}\,\)を満たすような整数\(\,x,y\,\)が存在するということです。
\(x^2=-y^2-1\pmod{p}\Leftrightarrow x^2+y^2+1=0\pmod{p}\,\)より,\(\,mp=x^2+y^2+1^2+0^2\,\)となる自然数\(\,m\,\)が存在します。
この自然数\(\,m\,\)は
\[m=\frac{1}{p}(x^2+y^2+1)\leq \frac{1}{p}\biggl\{2\biggl(\frac{p-1}{2}\biggr)^2+1\biggr\}\lt p\]
と評価できるので,これにて補題2は示されました。\(\quad\square\)
締めくくり
それでは四平方和定理の証明を完結させましょう。
そのためには前節の補題2で存在を証明した\(\,m\,\)の最小値\(\,m_0\,\)が\(\,1\,\)であることを示せば十分です。
そのことを示していきましょう。
まず自然数\(\,m_0\,\)の条件から,ある整数\(\,x_1,x_2,x_3,x_4\,\)が存在して,\(\,m_0p=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2\,\)となります。
この\(\,x_1,x_2,x_3,x_4\,\)の\(\,\bmod\,m_0\,\)での代表元をそれぞれ\(\,y_1,-y_2,-y_3,-y_4\,\)とおきます。
ただし代表元として,\(\,-\frac{m_0}{2}\lt y_1,-y_2,-y_3,-y_4\leq \frac{m_0}{2}\,\)を満たすように選んでおきます。
するともちろん\(\,y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2=m_0p=0\pmod{m_0}\,\)なので,
ある正の整数\(\,k\,\)が存在して\(\,y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2=m_0k\,\)が成り立ちます。
もし\(\,k=0\,\)なら\(\,y_1=y_2=y_3=y_4=0\,\)となり,これは\(\,x_1,x_2,x_3,x_4\,\)が\(\,m_0\,\)で割り切れることを意味します。
すると\(\,m_0p=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2\,\)の両辺は\(\,m_0^2\,\)で割り切れる必要があります。
よって\(\,p\,\)は\(\,m_0\,\)で割り切れます。
さらに補題2の\(\,m\,\)の評価から\(\,m_0\lt p\,\)であり,\(\,p\,\)が素数であることから\(\,m_0=1\,\)しかあり得ません。
故に後は\(\,k\gt 0\,\)の場合を考えましょう。
\(k\,\)の大きさを評価すると,\(\,|y_i|\leq \frac{m_0}{2}\,\)より
\[k=\frac{1}{m_0}(y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2)\leq \frac{4}{m_0}\cdot\frac{m_0^2}{4}=m_0\]
と評価できます。
もし上の評価の不等式の等号が成立するなら,成立条件から\(\,y_1=y_2=y_3=y_4=\frac{m_0}{2}\,\)となるはずです。
このとき\(\,x_i^2=y_i^2\pmod{m_0}\,\)より,
\[m_0p=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2=4\cdot\frac{m_0^2}{4}=0\pmod{m_0}\,\]
となります。
\(k=0\,\)のときと同様にこのときも\(\,m_0=1\,\)となります。
よって以下ではさらに\(\,0\lt k\lt m_0\,\)で考えます。
\(m_0p=x_1^2+\cdots+x_4^2,\,\,m_0k=y_1^2+\cdots+y_4^2\,\)の両辺をかけた
\[m_0^2kp=(x_1^2+\cdots+x_4^2)(y_1^2+\cdots+y_4^2)\]
について考えます。
このとき補題1:オイラーの四平方恒等式から右辺を\(\,(x_1^2+\cdots+x_4^2)(y_1^2+\cdots+y_4^2)=z_1^2+z_2^2+z_3^2+z_4^2\,\)と整数\(\,z_1,z_2,z_3,z_4\,\)の四平方和で書き直します。
正確に書けば
\[\begin{align*}z_1=&\,x_1y_1-x_2y_2-x_3y_3-x_4y_4, \\ z_2=&\,x_1y_2+x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3, \\ z_3=&\,x_1y_3-x_2y_4+x_3y_1+x_4y_2, \\ z_4=&\,x_1y_4+x_2y_3-x_3y_2+x_4y_1, \end{align*}\]
です。
このとき例えば\(\,z_1\,\)は\(\,\bmod\,m_0\,\)で\(\,x_1=y_1,x_2=-y_2,x_3=-y_3,x_4=-y_4\,\)より
\[z_1=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2=m_0p=0\pmod{m_0}\]
となります。
同様に\(\,z_2=z_3=z_4=0\pmod{m_0}\,\)も示せます。
以上より\(\,\frac{z_i}{m_0}\,\)は整数で,\(\,kp=\bigl(\frac{z_1}{m_0}\bigr)^2+\cdots+\bigl(\frac{z_4}{m_0}\bigr)^2\,\)が成り立ちます。
\(0\lt k\lt m_0\,\)よりこれは\(\,m_0\,\)の最小性に矛盾します。
したがって題意は示されました。\(\quad\square\)
発展的な話題
ラグランジュの四平方和定理は定理の主張だけでも美しいですが,周辺の話題がたくさんあります。
冒頭でも紹介した,より強い「ヤコビの四平方和定理」や,では3個の平方数和ならどうなのかという問題などです。
また有理整数環\(\,\mathbb{Z}\,\)における自然数\(\,\mathbb{N}\,\)の定義可能性の証明という数学基礎論にまで応用があるようです。
※少しかじった程度ですが,\(\,\mathbb{Z}\,\)の元が自然数であることと,ラグランジュの四平方和定理に出てくる\(\,n=x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2\,\)などで構成される論理式と同値なのが,数学基礎論では嬉しいみたいです。
簡単に言えば\(\,\mathbb{Z}\,\)内で\(\,n\geq 0\)という条件を,有利整数環の加法や乗法のみで記述できるから嬉しい的な感じらしいです。
興味を持った方は自分で調査してみると楽しいでしょう。
まとめ
今回の記事ではラグランジュの四平方和定理(Lagrange’s four-square theorem)を解説いたしました。
主張自体も面白く,関連話題も多いので,個人的には割と好きな定理です。
もし「説明がわかりにくい」などご要望・ご感想がありましたら,
X(旧:Twitter)で#サイエンティクスでつぶやいていただけると,できる限り対応します。
ここまで読んでいただき,ありがとうございました。
参考文献
- \([1]\) 数学セミナー編集部 編.“数学100の定理――ピタゴラスの定理から現代数学まで”.第1版.日本評論社.1999出版.pp.87-89.