こんにちは!半沢です!
今回の記事では解析学におけるワイエルシュトラス関数(Weierstrass function)について解説します。
ワイエルシュトラス関数は歴史上初めて,任意の実数上で微分不可能であることが示された連続関数です。
グラフや元論文の日本語訳も載せています。
ぜひ読んでいってください。
ワイエルシュトラス関数(Weierstrass function)
定義・性質
定義
ワイエルシュトラス関数\(\,f(x)\,\)は実数上で次のように定義される。
\[f(x)=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty} b^n \cos (a^n\pi x)\]ただし\(\,a\,\)は正の奇数,\(\,b\,\)は\(\,0\lt b\lt 1\,\)を満たす実数で,
さらに条件\(\,ab\gt 1+\frac{3}{2}\pi\,\)も満たすとする。
無限級数によって定義されているので,well-definedであることの確認が必要です。
\(|b^n\cos (a^n\pi x)|\lt b^n\,\)で,級数\(\,\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}b^n\,\)はもちろん収束するので,\(\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty} b^n \cos (a^n\pi x)\,\)は任意の実数\(\,x\,\)において絶対収束します。
よって\(\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty} b^n \cos (a^n\pi x)\,\)は任意の実数\(\,x\,\)において収束し,well-definedであることが確認できました。
同様にして,ワイエルシュトラスの\(\,M\text{-}\)判定法を用いれば,ワイエルシュトラス関数が連続であることも証明できます。
さて,このワイエルシュトラス関数の最も重要な性質はもちろん次のものです。
ワイエルシュトラス関数は至るところで微分不可能な連続関数である※。
このことをワイエルシュトラスは1872年に発表したわけですが,当時の数学会に激震が走りました。
当時の風潮としては,実数全体で微分できない連続関数の微分不可能点の集合は,\(\,f(x)=|x|\,\)の\(\,x=0\,\)のように,孤立点集合だろうと予測されていたからです。
微分不可能性の証明は後の節で行います。
※微分不可能性が成り立つように\(\,ab\gt 1+\frac{3}{2}\pi\,\)の条件を課していますが,現在では\(\,ab\geq 1\,\)まで緩められるそうです。
グラフ
この節では分かりやすいようにグラフを用いて視覚的に捉えましょう。
例えば条件を満たす\(\,a,b\,\)として,\(\,ab\gt 1+\frac{3}{2}\pi\fallingdotseq 5.71\,\)なので,\(\,a=9,\,\,b=0.7\,\)のときを考えましょう。
無限級数によって定義されているので,有限和\(\,\displaystyle\sum_{n=0}^{N} b^n \cos (a^n\pi x)\,\)により近似的にグラフを作成します。
すると\(\,a=9,\,\,b=0.7,\,\,N=20\)の場合のグラフは次のようになります。
ギザギザしていて至るところで微分不可な感じが伝わると思います。
\(N\,\)の増大にしたがってグラフがどのように近似されていくのかを表したのが下のgifです。
![]()
\(N=20\,\)程度でも視覚的には近似が十分なことが分かるでしょう。
微分不可能性の証明(ワイエルシュトラスの論文より)
それではワイエルシュトラス関数が至るところで微分不可能であることを証明しましょう。
ワイエルシュトラスの論文\(\,[1]\,\)
“Über continuirliche Functionen eines reellen Arguments, die für keinen Werth des letzteren einen bestimmten Differentialquotienten besitzen”
(日本語訳:至るところで確定した微分係数を持たない実変数連続関数について)
の証明がそのまま分かりやすかったので,元論文の全文を日本語訳して載せることにしました。
訳としては原文の雰囲気が伝わるよう,やや逐語訳に寄せています。
ドイツ語が読める方は,参考文献のリンク(google books)から閲覧できるので,ぜひ挑戦してみてください。
以下から始まります。
(1872年7月18日に行われた王立科学アカデミーでの講義より)
一価で連続な実変数連続関数はさらに常に一次導関数を持ち,その値はいくつかの点においてしか,不確定もしくは無限大になることができないと,最近まで一般的に推測されてきた。ガウス,コーシー,ディリクレの論文においてさえ,これらの数学者がこれと異なる意見であったことを明らかに示すような発言は私の知る限りでは見つかっていない。彼らがその学問において厳密な批評を徹底的に行うのに慣れていたにも関わらず。するとようやくリーマンが,私が何人かの聴講者から聞いた限りでは,そのような推測は許容できないもので,例えば無限級数
\[\sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{\sin (n^2x)}{n^2}\]
で表された関数においてはその推測は証明されないと,確信を持って主張した(1861年に,もしかしたらずっと以前に)。残念ながら,これに関するリーマンの証明は発表されておらず,さらに彼の文書や口伝のものも保存されていないようだ。リーマンが聴講者に対してどのように自分の考えを述べたのかを,私が確実に聞くことすらできなかっただけに,なおさらこのことを残念に思う。リーマンの主張がより広い範囲で有名になると,数学者たちはそのテーマに取り組み,(すくなくとも大多数のものが)どんなに小さないずれの区間においても微分できないような点を含むような関数の存在を証明するので十分だという意見を持っていたようだ。このような種類の関数の存在は,非常に容易に証明することができ,それゆえ私はリーマンが至るところで確定した微分係数をもたない関数だけを目的としていたと考える。上に述べられた三角関数による級数がこのような種類の関数であることの証明は,しかし私にとってかなり難しいと感じる。ところが実変数\(\,x\,\)の連続関数で,確定した微分係数を至るところで持たないことを最も簡素な手法で証明できるものを容易に構成することができる。
これは例えば次のように行われる。
\(x\,\)を実変数,\(\,a\,\)を奇数,\(\,b\,\)を\(\,1\,\)より小さい正数とし,
\[f(x)=\sum_{n=0}^{\infty} b^n \cos (a^nx\pi),\]
とする。このとき\(\,f(x)\,\)は,積\(\,ab\,\)の値がある境界を上回ると,どの点においても定まった微分商を持たないことが証明できるような連続関数である。
\(x_0\,\)を\(\,x\,\)の任意に固定した値,\(\,m\,\)を任意の正の整数とすると,差分
\[\,x_m\coloneqq a^mx_0-\alpha_m,\,\]
が\(\,\gt -\frac{1}{2}\,\)だが,\(\,\leq \frac{1}{2}\,\)となるような,ある整数\(\,\alpha_m\,\)が存在する。
それから
\[x’=\frac{\alpha_m-1}{a^m},\qquad x”=\frac{\alpha_m+1}{a^m},\]
とおくと,
\[x’-x_0=-\frac{1+x_{m+1}}{a^m},\qquad x”-x_0=\frac{1-x_{m+1}}{a^m},\]
で,さらに
\[x’\lt x_0\lt x”\]
が成り立つ。
\(x’,x”\,\)の両方とも\(\,x_0\,\)に望むだけ近づけるように,\(m\,\)を十分に大きく取ることができる。
ところで,
\[\begin{align*}\frac{f(x’)-f(x_0)}{x’-x_0}&=\sum_{n=0}^{\infty}\biggl(b^n\cdot\frac{\cos (a^nx’\pi)-\cos (a^nx_0\pi)}{x’-x_0}\biggr) \\ &=\sum_{n=0}^{m-1}\biggl((ab)^n\cdot \frac{\cos (a^nx’\pi) -\cos (a^n x_0\pi)}{a^n(x’-x_0)}\biggr) \\ &\,\,\,+\sum_{m=0}^{\infty}\biggl(b^{m+n}\cdot\frac{\cos(a^{m+n}x’\pi)-\cos (a^{m+n}x_0\pi)}{x’-x_0}\biggr)\end{align*}\]
となる。
この展開の初項は,
\[\frac{\cos(a^nx’\pi)-\cos(a^nx_0\pi)}{a^n(x’-x_0)}=\pi\sin\biggl(a^n\frac{x+x_0}{2}\pi\biggr)\cdot\frac{\sin\biggl(a^n\dfrac{x’-x_0}{2}\pi\biggr)}{a^n\dfrac{x’-x_0}{2}\pi}\]
で,
\[\,\frac{\sin\biggl(a^n\dfrac{x’-x_0}{2}\pi\biggr)}{a^n\dfrac{x’-x_0}{2}\pi}\,\]
の値は常に\(\,-1\,\)と\(\,1\,\)の間にあるので,その絶対値について,
\[\pi\sum_{m=0}^{m-1}(ab)^n,\]
よりは小さい。よってさらに
\[\dfrac{\pi}{ab-1}(ab)^m\]
より小さいと言える。
更に,\(\,a\,\)は奇数なので,
\[\begin{align*}&\cos (a^{m+n}x’\pi)=\cos(a^n(\alpha_m-1)\pi)=-(-1)^{\alpha_m}, \\ &\cos(a^{m+n}x_0\pi)=\cos(a^n\alpha_m\pi+a^nx_{m+1}\pi)=(-1)^{\alpha_m}\cos (a^n x_{m+1}\pi),\end{align*}\]
故に,
\[\sum_{n=0}^{\infty}b^{n+m}\cdot\biggl(\dfrac{\cos (a^{m+n}x’\pi)-\cos(a^{m+n}x_0\pi)}{x’-x_0}\biggr)=(-1)^{\alpha_m}(ab)^m\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1+\cos(a^nx_{m+1}\pi)}{1+x_{m+1}}b^n\]
となる。この和のすべての
\[\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1+\cos (a^n x_{m+1}\pi)}{1+x_{m+1}}b^n\]
という項は正で,\(\,\cos (x_{m+1}\pi)\,\)が非負で,一方\(\,1+x_{m+1}\,\)は\(\,\frac{1}{2}\,\)と\(\,\frac{3}{2}\,\)の間にあるので,その初項は\(\,\frac{2}{3}\,\)以上である。
従って
\[\dfrac{f(x’)-f(x_0)}{x’-x_0}=(-1)^{\alpha_m}(ab)^m\cdot \eta\biggl(\dfrac{2}{3}+\varepsilon\dfrac{\pi}{ab-1}\biggr),\]
ただし\(\,\eta\gt 1\,\)は正数を表し,一方\(\,\varepsilon\,\)は\(\,-1\,\)から\(\,1\,\)の間にある。
同様に
\[\dfrac{f(x”)-f(x_0)}{x”-x_0}=-(-1)^{\alpha_m}(ab)^m\cdot \eta_1\biggl(\dfrac{2}{3}+\varepsilon_1\dfrac{\pi}{ab-1}\biggr),\]
が明らかとなる,ただし\(\,\eta\,\)と同様に\(\,\eta_1\,\)は正で\(\,\gt 1\,\),一方\(\,\varepsilon_1\,\)は\(\,-1\,\)から\(\,1\,\)の間にある。
今\(\,a,b\,\)を\(\,ab\gt 1+\frac{3}{2}\pi\,\)を満たすように取ると,このとき
\[\dfrac{2}{3}\gt \dfrac{\pi}{ab-1}\]
であり,そして
\[\,\dfrac{f(x’)-f(x_0)}{x’-x_0},\qquad \dfrac{f(x”)-f(x_0)}{x”-x_0}\,\]
は常に逆の符号を持ち,\(\,m\,\)を際限なく大きくすると,両方とも無限大になる。
このことから,\(\,f(x)\,\)はその点\(\,(x=x_0)\)において確定した有限,もしくは確定した無限大の微分係数を持たないことがすぐに明らかになる。
まとめ
今回の記事ではワイエルシュトラス関数(Weierstrass function)を解説いたしました。
余談ですが,ワイエルシュトラスはドイツ語の発音的に本当はヴァイエルシュトラスです。
もし「説明がわかりにくい」などご要望・ご感想がありましたら,
X(旧:Twitter)で#サイエンティクスでつぶやいていただけると,できる限り対応します。
ここまで読んでいただき,ありがとうございました。
参考文献
- \([1]\) Weierstrass, Karl.”Über continuirliche Functionen eines reellen Arguments, die für keinen Werth des letzteren einen bestimmten Differentialquotienten besitzen”.Mathematische werke: bd. Abhandlungen II. 1895.pp.71-74.
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