こんにちは!半沢です!
今回の記事ではリー代数における\(\,2\,\)次元リー代数(2-dimensional Lie algebra)について解説します。
群やリー代数などの構造が与えられると,その分類が気になるのが人の性です。
そのような本能に応えて,\(\,2\,\)次元リー代数の分類を行っていきます。
ちなみに\(\,1\,\)次元の場合は,ほとんど自明なので補遺で取り扱っています。気になる方は参照してください。
またこの結果を踏まえて,\(\,3\,\)次元複素リー代数の分類を行うので,楽しみにしておいてください。
\(2\,\)次元リー代数の分類
可換な場合
\(n\,\)次元可換リー代数について,一般的に次のことが知られています。
命題
体\(\,K\,\)上の\(\,n\,\)次元可換リー代数は同型を除いてただ一つである。
証明は構造定数の記事で行っています。
そのためベクトル空間\(\,K^2\,\)上にブラケット\(\,[\cdot,\cdot]:K\times K\to K\,\)を
\[\,[x,y]=0\quad(\forall x,y\in K),\,\]
で定めた,可換リー代数\(\,K^2\,\)だけです。
非可換な場合
次の命題を示すことがこの節の目的です。
命題
体\(\,K\,\)上の\(\,2\,\)次元非可換リー代数は同型を除いてただ一つである。
そのリー代数はうまく基底\(\,\{x,y\}\,\)を取れば,\(\,[x,y]=x\,\)とできる。
それでは証明です。
\(L\,\)を\(\,2\,\)次元非可換リー代数として,その持つべき性質を調べましょう。
まず\(\,L\,\)の導来イデアル\(\,L’\coloneqq [L,L]\,\)の次元は\(\,1\,\)であることを確認します。
\(\,L\,\)の基底を\(\,\{x,y\}\,\)と取ると,任意の\(\,a,b,c,d\in K\,\)について
\[[ax+by,cx+dy]=ad[x,y]+bc[y,x]=(ad-bc)[x,y],\]
となるので,定義より\(\,L’=\langle [x,y]\rangle\,\)となります。
よって\(\,L’\,\)の次元は\(\,1\,\)以下であることが分かりますが,仮に\(\,0\,\)とすると,それは\(\,L\,\)が可換であることを意味するので矛盾です。
故に\(\,\dim L’=1\,\)となります。
そこで\(\,L’\,\)の基底\(\,\{x\}\,\)を取ってきて,それを拡張して\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y\}\,\)と取り直します。
\([x,y]\in L’\,\)なので,ある\(\,\alpha(\not=0)\in K\,\)が存在して,\(\,[x,y]=\alpha x\,\)と書けます。
\(\alpha^{-1}y\,\)を\(\,y\,\)と取り直すことで,\(\,[x,y]=x\,\)と書き直しても良いです。
したがって,これまでの議論により\(\,L\,\)の構造定数はただ一つに定まりました。
構造定数の記事の命題1から,\(\,2\,\)次元非可換リー代数は,存在すれば同型を除いてただ一つであることと,
また,そのリー代数はうまく基底\(\,\{x,y\}\,\)を取れば,\(\,[x,y]=x\,\)とできることは示されました。
そのため後はそのようなリー代数の存在を証明すればよいです。
既に構造定数が定まっているため,このときヤコビ恒等式が満たされることを示せば,適当な\(\,2\,\)次元ベクトル空間にそのブラケット\(\,[\cdot,\cdot]\,\)を定めることができます。
ここで問題のリー代数の任意の元\(\,\,a=a_1x+a_2y,\,\,b=b_1x+b_2y,c=\,\,c_1x+c_2y\,\,(\forall a_i,c_i\in K)\,\)に対し,
\[\begin{align*}&\,[a,[b,c]]\\=&\,[a,(b_1c_2-b_2c_1)x]\\ =&\, \{a_1(b_1c_2-b_2c_1)-a_2(b_1c_2-b_2c_1)\}x \\ =&\, \{u_1(\bm{u}\times \bm{v})_1-v_1(\bm{u}\times \bm{v})_1\}x,\end{align*}\]
と計算できます。
ただし表記のために
\[\bm{u}\coloneqq\begin{pmatrix}a_1 \\ b_1 \\ c_1\end{pmatrix},\qquad \bm{v}\coloneqq\begin{pmatrix}a_2 \\ b_2 \\ c_2\end{pmatrix},\]
を定義し,\(\,\bm{w}\in K^3\,\)の第\(\,i\,\)成分を\(\,w_i\,\)で表すことにしました。
よって
\[\begin{align*}&\,[a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]] \\ =&\,\{\bm{u}\cdot(\bm{u}\times\bm{v})-\bm{v}\cdot(\bm{u}\times\bm{v})\}x \\ =&\,0\end{align*}\]
となり,ヤコビ恒等式が満たされ,問題のリー代数の証明は完了しました。\(\quad\square\)
分類
以上によって体\(\,K\,\)上\(\,2\,\)次元リー代数の分類は次のようになります。
\(L\,\)の列の要素は元になるベクトル空間で,\(\,[x_1,x_2]\,\)の列は\(\,L\,\)のある基底\(\,\{x_1,x_2\}\,\)に関する\(\,[x_1,x_2]\,\)の値を表します。
まとめ
今回の記事では\(\,2\,\)次元リー代数(2-dimensional Lie algebra)を解説いたしました。
次回は\(\,3\,\)次元複素リー代数の分類を行う予定なので,楽しみしておいてください。
もし「説明がわかりにくい」などご要望・ご感想がありましたら,
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ここまで読んでいただき,ありがとうございました。
補遺:\(\,1\,\)次元リー代数の分類
\(1\,\)次元リー代数の分類のために次の補題を示します。
補題
\(1\,\)次元リー代数は可換である。
証明は体\(\,K\,\)上の\(\,1\,\)次元リー代数について,\(\,L=\langle e\rangle\,\)とおくと,任意の元は\(\,\alpha e\,\,(\alpha\in K)\,\)の形なので,
\[[\alpha e,\beta e]=\alpha\beta[e,e]=0\,\,(\forall \alpha,\beta\in K)\]
となることから分かります。
そして構造定数の記事で証明した
命題
体\(\,K\,\)上の\(\,n\,\)次元可換リー代数は同型を除いてただ一つである。
より,\(\,1\,\)次元リー代数は,可換なブラケットが定義された\(\,K\,\)だけであることが言えます。
これにて\(\,1\,\)次元リー代数の分類完了です。
参考文献
- \([1]\) Karin Erdmann and Mark J. Wildon.“Introduction to Lie Algebras”,1st ed., ebook, Springer London.Published 2006,20p.