【リー代数】三次元複素リー代数の分類を証明付きで丁寧に解説!!

こんにちは!半沢です!

今回の記事ではリー代数における\(\,3\,\)次元複素リー代数(3-dimensional complex Lie algebra)について解説します。

\(3\,\)次元複素リー代数の分類を行うのが目的です!

前回の\(\,2\,\)次元リー代数の分類で用いた知識は前提として解説します。

そのためリー代数にあまり自信のない方はそちらを先に読むことをおススメします。

\(3\,\)次元複素リー代数の分類

分類の結果だけを知りたい方は分類表をご覧ください。

複素数体\(\,\mathbb{C}\,\)だけでなく任意の体\(\,K\,\)において成り立つ命題は,必ず複素数体に制限せず論証しています。

逆に言えば複素数体に制限して述べられている命題は,複素数体が代数閉体であるなどの性質が証明に用いられています。

\(\dim L’=0\,\,\)(可換)の場合

\(\dim L’=0\,\)はブラケットが常に\(\,0\,\)を返すことを意味しますので,

ベクトル空間\(\,K^3\,\)上にブラケット\(\,[\cdot,\cdot]:K^3\times K^3\to K^3 \,\)を

\[[x,y]=0\quad (x,y\in K^3),\]

で定めた,可換リー代数\(\,K^3\,\)だけです。

\(\dim L’=1\,\)かつ\(\,L’\subseteq Z(L)\,\)の場合

次の命題を示すことがこの節の目的です。

命題1
体\(\,K\,\)上の\(\,3\,\)次元リー代数\(\,L\,\)で\(\,\dim L’=1\,\)かつ\(\,L’\subseteq Z(L)\,\)となるものは同型を除いてただ一つで,
そのリー代数はうまく基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取れば,
\[[x,y]=0,\quad [y,z]=x,\quad [z,x]=0,\]とできる。

証明です。

\(\dim L’=1\,\)より,\(\,L’=\langle x\rangle\,\)となる\(\,x\,(\not=0)\in L\,\)が取れます。

この\(\,x\,\)を含むような\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を適当に取ってきます。

\([y,z]\in L’\,\)より,\(\,\exists \alpha\in K, [y,z]=\alpha x\,\)となります。

仮に\(\,\alpha=0\,\)とすると\(\,x\in L’\subseteq Z(L)\,\)より,\(\,[x,y]=[y,z]=[z,x]=0\,\)となり,これは\(\,\dim L’=0\,\)を意味するので矛盾です。

よって\(\,\alpha\not=0\,\)なので,\(\,\alpha^{-1}y\,\)を\(\,y\,\)と取り直すことで,\(\,[y,z]=x\,\)とできます。

また\(\,x\in L’\subseteq Z(L)\,\)より,\(\,[x,y]=[z,x]=0\,\)です。

以上で構造定数の値が定まったので,条件を満たすリー代数\(\,L\,\)が存在すれば同型を除いて一つであることが示されました。

後は存在性を示しましょう。

存在性を示すためには,逆にこのようにブラケットを定めたときに,ヤコビ恒等式や\(\,\dim L’=1\)かつ\(\,L\subseteq Z(L)\,\)を満たすことを確認すれば良いです。

\(L’=\langle x\rangle \subseteq Z(L)\,\)となることは簡単に確認できます。

そのため\(\,\forall a,b,c\in L\,\)について,\(\,[b,c]\in L’\subseteq Z(L)\,\)より,\(\,[a,[b,c]]=0\,\)となるので,ヤコビ恒等式

\[[a,[b,c]]+[b,[c,a]]+[c,[a,b]]=0\quad (\forall a,b,c\in L),\]

も確認できます。

したがって存在性も示されたので,証明終了です。\(\quad\square\)

このリー代数は\(\,3\,\)次元ハイゼンベルクリー代数(Heisenberg Lie algebra)と呼ばれ,\(\,\mathfrak{h}_3(K)\,\)で表すことにします。

\(3\,\)次べき零上三角行列の集合により,

\[\mathfrak{h}_3(K)=\left\{ \left(\begin{array}{ccc}0&a&b \\ 0&0&c \\ 0&0&0 \end{array}\right)\in \mathrm{M}_3(K)\right\},\]

と表すこともできます。

実際に基底\(\,\{e_{13},e_{12},e_{23}\}\,\)(\(\,e_{ij}\,\)は\(\,(i,j)\,\)成分だけ\(\,1\,\)でそれ以外は\(\,0\,\)の行列)を取れば,

\[[e_{13},e_{12}]=0,\quad [e_{12},e_{23}]=e_{13},\quad [e_{23},e_{13}]=0,\]

と同様の交換関係が成り立つことが確認できます。

\(\dim L’=1\,\)かつ\(\,L’\not\subseteq Z(L)\,\)の場合

次の命題を示すことがこの節の目的です。

命題2
体\(\,K\,\)上の\(\,3\,\)次元リー代数\(\,L\,\)で\(\,\dim L’=1\,\)かつ\(\,L’\not\subseteq Z(L)\,\)となるものは同型を除いてただ一つで,
それは\(\,2\,\)次元非可換リー代数と\(\,1\,\)次元リー代数の直和と同型である。

\(2\,\)次元非可換リー代数\(\,L_2\,\)と\(\,1\,\)次元リー代数\(\,L_1\,\)との直和\(\,L_1\oplus L_2\,\)は,\(\,L_1’=\{0\}\,\)より,

\[(L_2\oplus L_1)’=L_2’\oplus L_1’= {L_2}’ .\]

一方\(\,Z(L_2)=\{0\},Z(L_1)=L_1\,\)より,

\[Z(L_2\oplus L_1)=Z(L_2)\oplus Z(L_1)=L_1,\]

で,実際に\(\,\dim (L_2\oplus L_1)’=1\,\)かつ\(\,(L_2\oplus L_1)’\not\subseteq Z(L_2\oplus L_1)\,\)を満たすことが確認できます。

確認を終えたところで,命題2の証明を行いましょう。

\(\dim L’=1\,\)より\(\,L’=\langle x\rangle\,\)となる元\(\,x\in L\,\)を取ってきます。

\(L’\not\subseteq Z(L)\,\)より\(\,x\not\in Z(L)\,\)です。

そのため\(\,\exists y\in L,[x,y]\not=0\,\)です。

また\(\,[x,y]\in L’\,\)なので,\(\,[x,y]=\alpha x\,\,(\alpha\in K\setminus\{0\})\,\)と書けますが,\(\,\alpha^{-1}y\,\)を\(\,y\,\)と取り直すことで,\(\,[x,y]=x\,\)とできます。

\(x,y\,\)は\(\,[x,y]\not=0\,\)で線形独立なので,拡張して\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y,w\}\,\)を取ることができます。

\([y,w],[z,w]\in L’=\langle x\rangle\,\)なので,

\[[y,w]=\alpha x,\quad [w,x]=\beta x\quad (\alpha,\beta\in K),\,\]

と書けます。

これらのブラケットの値を確定させたいので,\(\,z=\lambda x+\mu y+\nu w\in L\,\)とおいて,係数\(\lambda ,\mu,\nu\)を調整することで\(\,w\,\)よりも「良い」基底を見つけることを考えます。

すると

\[\begin{align*}[y,z]=&\,[y,\lambda x+\mu y+\nu w]=(-\lambda+\nu\alpha) x,\\ [z,x]=&\,[\lambda x+\mu y+\nu w,x]=(-\mu+\nu\beta)x,\end{align*}\]

と計算できます。

そこで\(\,\lambda=\alpha,\mu=\beta,\nu=1\,\)とおけば,\(\,[y,z]=[z,x]=0\,\)となるような基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取ることができます。

以上より\(\,L\,\)の構造定数が定まり,それは\(\,1\,\)次元リー代数と\(\,2\,\)次元非可換リー代数の直和と一致するので,題意は示されました。\(\quad\square\)

\(\dim L’=2\,\)かつ\(\,\operatorname{ad}z\,\)が\(\,L’\,\)上で対角化可能\(\,(\exists z\not\in L’)\,\)の場合

まずは次の補題を示します。

補題
体\(\,K\,\)上の\(\,3\,\)次元リー代数で\(\,\dim L’=2\,\)とする。
このとき次の\(\,(\mathrm{i}),(\mathrm{ii})\,\)が成り立つ。
\((\mathrm{i})\,\)\(\,L’\,\)は可換である。
\((\mathrm{ii})\,\)\(\,z\not\in L’\)について\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L’\,\)は同型である。

\((\mathrm{i})\,\)から示します。

\(L’\,\)の基底\(\,\{x,y\}\,\)を取り,それに\(\,z\not\in L\,\)を付け加えることで\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)が取れます。

\([x,y]\in L’\,\)なので,\(\,[x,y]=\alpha x+\beta y\,\,(\alpha,\beta\in K)\,\)と書けます。

このとき\(\,\operatorname{ad}x: L\to L\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)に関する表現行列は

\[\begin{pmatrix} 0&\alpha&\ast \\ 0& \beta & \ast \\ 0 & 0 & 0\end{pmatrix},\]

となります(\(\,\ast\,\)の部分を詳しく知る必要はないです)。

ここで\(\,[a,b]\in L’\,\)について,\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}[a,b])\,\)を考えると,

\[\begin{align*}&\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}[a,b])=\operatorname{tr}[\operatorname{ad}a,\operatorname{ad}b]\\=&\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}a\circ\operatorname{ad}b-\operatorname{ad}b\circ\operatorname{ad}a)=0,\end{align*}\]

となります。

\(L’=\langle [a,b]\,|\,a,b\in L\rangle\)なので,これより\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}w)=0\,\,(\forall w\in L’)\,\)となることが分かります。

※後に\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}z)=0\,\,(z\in L’)\,\)であることは再び使います。

よって\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}x)=\beta=0\,\)が導かれます。

同様に\(\,\operatorname{ad}y\,\)を考えることで,\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}y)=\alpha=0\,\)を得ます。

以上より\(\,[x,y]=0\,\)となるので,\(\,L’\,\)は可換となることが示されました。

続いて\(\,(\mathrm{ii})\,\)を示します。

今\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取ってるので,\(\,L’=\langle [x,y],[y,z],[z,x]\rangle\,\)です。

ここで\(\,(\mathrm{i})\,\)より\(\,[x,y]=0\,\)なので,\(\,L’=\langle [y,z],[z,x]\rangle\,\)です。

\(\dim L’=2\)なので,\(\,\{[y,z],[z,x]\}\subseteq \operatorname{ad}z(L’)\,\)は\(\,L’\,\)の基底となります。

よって\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L’\,\)は次元を保つので,同型となります。\(\quad\square\)

ようやく,この節の目的である次の命題を示しましょう。

命題3
体\(\,K\,\)上の\(\,3\,\)次元リー代数\(\,L\,\)で\(\,\dim L’=2\,\)かつ\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L’\,\)が対角化可能\(\,(\exists z\not\in L’)\,\)となるものは,
\(\,1\,\)次元可換リー代数\(\,K\,\)と\(2\,\)次元可換リー代数\(\,K^2\,\)のリー代数準同型\(\,\varphi_{\mu}:K\to \operatorname{Der}K^2\,\)による半直積\(\,K^2\rtimes_{\varphi_\mu} K\,\)と同型である。
ただしリー代数準同型\(\,\varphi_{\mu}:K\to \operatorname{Der}K^2\,\)は,\(\,K^2\,\)の基底\(\,\{x,y\}\,\)と\(\,K\,\)の基底\(\,\{z\}\,\)を上手く取れば,\(\,\varphi_\mu(z)\in \operatorname{Der}\mathbb{C}^2\,\)を,
\[\begin{pmatrix}1&0 \\ 0&\mu \end{pmatrix}\quad(\mu\in K\setminus\{0\}),\]の対角行列で表現できるようなものである。

煩わしいので\(\,L_\mu=K^2\rtimes_{\varphi_\mu} K\,\)と今後は書くことにします。

この命題3がこれまでとやや異なる点は同型を除いてただ一つではない点です。

さらに補足で\(\,L_\mu\cong L_\nu\Leftrightarrow \mu=\nu,\nu^{-1}\,\)となることが示されるので,この条件下では非可算無限個の同型類が存在することに注意しましょう。

また\(\,L_\mu\,\)の基底を\(\,\varphi_\mu(z)\,\)が対角行列となるような基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取れば,構成方法より

\[[x,y]=0,\quad [y,z]=-\mu y,\quad [z,x]=1,\]

と計算されます。

よって\(\,(L_{\mu})’=K^2\,\)と計算でき,\(\,\dim (L_{\mu})’=2\,\)が従います。

そして\(\,\operatorname{ad}z\,\)が対角化可能\(\,(\exists z\not\in (L_\mu)’)\,\)となることは\(\,\varphi_\mu(z)\,\)に関する条件から明らかであることから,

\(L_{\mu}\,\)が条件を満たすことも確認できます。

それでは証明です。

まず条件より\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L’\,\)が対角化可能となるような元\(\,z\not\in L’\,\)が取れます。

そしてその固有ベクトルを\(\,x,y\in L’\,\)とおきます。

補題より\(\,\operatorname{ad}z\,\)は同型なので,それらの固有値は\(\,0\,\)ではありません。

そこで\(\,\operatorname{ad}z(x)=\lambda x\,\)なら,\(\,\lambda^{-1}z\,\)を\(\,z\,\)と取り直すことで,\(\,x\,\)の固有値を\(\,1\,\)としても良いです。

このとき\(\,z\,\)の固有値を\(\,\mu\not=0\,\)とおくと,\(\,\operatorname{ad}z\,\)の基底\(\{x,y\}\)に関する表現行列は

\[\begin{pmatrix} 1& 0\\ 0 & \mu\end{pmatrix},\]

と確認できます。

したがって\(\,L\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)について,

\[[x,y]=0,\quad [y,z]=-\mu y,\quad [z,x]=1,\]

という交換関係が成り立ち,これは\(\,L_{\mu}\,\)の構造定数と一致することを意味するので証明は完了です。\(\quad\square\)

\(\dim L’=2\,\)かつ\(\,\operatorname{ad}z\,\)が\(\,L’\,\)上で対角化不可能\(\,(\forall z\not\in L’)\,\)の場合

この節の目的は次の命題です。

命題4
\(3\,\)次元複素リー代数\(\,L\,\)で\(\,\dim L’=2\,\)かつ\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L’\,\)が対角化不可能\(\,(\forall z\not\in L’)\,\)となるものは同型を除いてただ一つで,
それは\(\,1\,\)次元可換リー代数\(\,\mathbb{C}\,\)と\(2\,\)次元可換リー代数\(\,\mathbb{C}^2\,\)のリー代数準同型\(\,\psi:\mathbb{C}\to \operatorname{Der}\mathbb{C}^2\,\)による半直積\(\,\mathbb{C}^2\rtimes_{\psi} \mathbb{C}\,\)と同型である。
ただしリー代数準同型\(\,\psi:\mathbb{C}\to \operatorname{Der}K^2\,\)は,\(\,\mathbb{C}^2\,\)の基底\(\,\{x,y\}\,\)と\(\,\mathbb{C}\,\)の基底\(\,\{z\}\,\)を上手く取れば,\(\,\psi(z)\in \operatorname{Der}K^2\,\)を,
\[\begin{pmatrix}1&1 \\ 0&1 \end{pmatrix},\]のジョルダン標準形で表現できるようなものである。

それでは証明です。

まずは\(\,L_\psi\coloneqq \mathbb{C}^2\rtimes_{\psi} \mathbb{C}\,\)が考えている条件を満たすことを考えましょう。

\(L_{\psi}\,\)の基底を\(\,\psi\,\)が与えられたジョルダン標準形となるような基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取れば,

\[[x,y]=0,\quad [y,z]=-x-y,\quad [z,x]=x,\]

と計算されます。

よって\(\,(L_{\psi})’=\mathbb{C}^2\,\)と計算でき,\(\,\dim (L_{\psi})’=2\,\)は従います。

続いて\(\,z’=\alpha x+\beta y+\gamma z\not \in L’\,\)について,\(\,\operatorname{ad}z’:L’\to L’\,\)が対角化不可能であることを確認しましょう。

\(z’\not\in L’\,\)より\(\,\gamma\not=0\,\)で,

\[\operatorname{ad}z'(x)=\gamma x,\quad\operatorname{ad}z'(y)=\gamma(x+y),\]

より,表現行列は

\[\gamma \begin{pmatrix}1&1 \\ 0&1\end{pmatrix}\]

となります。

故にジョルダン標準形の一意性より,\(\,\operatorname{ad}z’\,\)は対角化不可能となります。

したがって\(\,L_{\psi}\,\)が考えている条件を満たすことを確認できました。

次に条件を満たす\(\,3\,\)次元リー代数\(\,L\,\)は\(\,L_\psi\,\)に同型であることを証明します。

適当に\(\,z(\not= 0)\in L’\,\)を固定すると,条件より\(\,\operatorname{ad}z:L’\to L\,\)は対角化不可能です。

そこで\(\,\operatorname{ad}z\,\)のジョルダン標準形を考えます。

前節の証明と同様にして,スカラーを調整することでその固有値は\(\,1\,\)として良いです。

つまり\(\,L’\,\)のある基底\(\,\{x,y\}\,\)を用いると,\(\,\operatorname{ad}z\,\)はジョルダン標準形

\[\begin{pmatrix}1&1 \\ 0&1\end{pmatrix}\]

として表現できるということです。

これは\(\,L_{\psi}\,\)と構造定数が一致することを意味するので証明完了です。\(\quad\square\)

\(\dim L’=3\,\)の場合

これを終えれば分類完了です。次の命題を示すことが目的です。

\(3\,\)次元複素リー代数\(\,L\,\)で\(\,\dim L’=3\,\)となるものは同型を除いてただ一つで,
それは\(\,2\,\)次特殊線形リー代数\(\,\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)である。

\(\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})’=\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)となることをまずは証明しましょう。

\(\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)の基底\(\,\{x,y,z\}\,\)として

\[x=\begin{pmatrix}1&0 \\ 0&-1\end{pmatrix},\quad y=\begin{pmatrix}0&1 \\ 0&0\end{pmatrix},\quad z=\begin{pmatrix}0&0 \\ 1&0\end{pmatrix},\]

を選ぶことができ,その交換関係は

\[[x,y]=2y,\quad [y,z]=x,\quad [z,x]=2z,\]

となります。

よって\(\,\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})’=\langle 2y,x,2z\rangle=\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)となることが分かりました。

上の交換関係は後の方で再び取り扱うので,覚えておいてください。

さて,それでは本題の,条件を満たす\(\,3\,\)次元複素リー代数\(\,L\,\)は\(\,\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)に同型であることを示していきましょう。

まず\(\,\forall a\,(\not=0)\in L\,\)について\(\,\operatorname{ad}a\,\)の階数は\(\,2\,\)です。

なぜなら,適当に\(\,L\,\)の\(\,a\,\)を含む基底\(\,\{a,b,c\}\,\)を取れば\(\,L’=\langle [a,b],[b,c],[c,a]\rangle\,\)となります。

そして\(\dim L’=3\,\)より\(\,[a,b],[c,a]\in \operatorname{ad}a(L)\,\)は線形独立であることが言えるからですね。

このことから\(\,\operatorname{ad}x\,\)が\(\,0\,\)でない固有値を持つような\(\,x\,(\not=0) \in L\,\)の存在を証明します。

適当にもってきた\(\,x\,\)について\(\,\operatorname{ad}x\,\)が\(\,0\,\)でない固有値を持つなら証明するまでもありません。

反対に\(\,\operatorname{ad}x\,\)が\(\,0\,\)でない固有値を持たないなら,先ほど示したことより階数が\(\,2\,\)なので,そのジョルダン標準形は

\[\begin{pmatrix}0&1&0 \\ 0&0&1 \\ 0&0&0 \end{pmatrix}.\]

つまりある基底\(\,\{a,b,c\}\,\)を取れば\(\,[x,a]=0,\,\,[x,b]=a\,\)とできるということです。

\([x,a]=0\,\)より\(\,a\in \operatorname{Ker}(\operatorname{ad}x)\,\)で,また\(\,x\in \operatorname{Ker}(\operatorname{ad}x)\,\)かつ\(\,\dim \operatorname{Ker}(\operatorname{ad}x)=3- \dim\operatorname{ad}x(L)=1 \,\)であることより,\(\,a=\alpha x\,\,(\alpha\not=0)\,\)とおけます。

よって\(\,[x,b]=a\Leftrightarrow [b,x]=-\alpha x\,\)となり,\(\,\operatorname{ad}b\,\)は固有値\(\,-\alpha\not=0\,\)を持ちます。

つまりこの場合は\(\,b\,\)と\(\,x\,\)を取り換えれば良いです。

故に\(\,\operatorname{ad}x\,\)が\(\,0\,\)でない固有値を持つような\(\,x\,(\not=0)\in L\,\)の存在は示されました。

続いてこの存在性を示した\(\,x\,\)について,\(\,\operatorname{ad}x\,\)が対角化可能であることを示します。

まず\(\,x\in L=L’\,\)なのでここと同じ論法で\(\,\operatorname{tr}(\operatorname{ad}x)=0\,\)です。

つまり\(\,\operatorname{ad}x\,\)の固有値の和は\(\,0\,\)ということですね。

また\(\,\operatorname{ad}x(x)=0\,\)より固有値\(\,0\,\)は少なくとも一つ持つことと,\(\,\operatorname{ad} x\,\)の階数が\(\,2\,\)であることより\(\,0\,\)でない固有値も少なくとも一つ持ちます。

以上のことを踏まえると\(\,\operatorname{ad}x\,\)の固有値は\(\,0,\alpha,-\alpha \,\,(\alpha\not=0)\,\)の相異なるものだと分かります。

固有値が相異なるため\(\,\operatorname{ad}x\,\)は対角化可能であることが分かりました。

そして,これまでの情報から構造定数を決定して行きます。

まず\(\,\operatorname{ad}x\,\)の固有ベクトルからなる基底\(\,\{x,y,z\}\,\)を取ります。固有値はそれぞれ\(\,0,\alpha,-\alpha\,\)です。

\(x\,\)をスカラー倍したものに取り直すことで,以後\(\,\alpha=2\,\)としても構いません。

後は残りの\([y,z]\,\)の値を決定したいです。ここでヤコビ恒等式を用いると,

\[[x,[y,z]]=[[x,y],z]+[y,[x,z]]=2[y,z]+(-2)[y,z]=0.\]

よって\(\,[y,z]\in \operatorname{Ker}(\operatorname{ad}x)\,\)で\(\,[y,z]=\lambda x\,\,(\lambda\in \mathbb{C})\,\)とおけます。

ここで\(\,\operatorname{ad}y\,\)の階数も\(\,2\,\)であるので\(\,\lambda\not=0\,\)です。

そのため\(\,\lambda^{-1}y\,\)を\(\,y\,\)に取り直すことで\(\,\lambda=1\,\)としても構いません。

以上より基底\(\,\{x,y,z\}\,\)に関して

\[[x,y]=2y,\quad [y,z]=x,\quad [z,x]=2z,\]

で,構造定数が\(\,2\,\)次特殊線形リー代数\(\,\mathfrak{sl}(2,\mathbb{C})\,\)と一致することが分かりました。

したがって証明は完了です。\(\quad\square\)

\(3\,\)次元複素リー代数の分類表

以上により\(\,3\,\)次元複素リー代数の分類は次のようになります。

\(L\,\)の列は元になるベクトル空間,

\([x,y],[y,z],[z,x]\,\)の列は\(\,L\,\)のある基底\(\,\{x,y,z\}\,\)に関する\(\,[x,y],[y,z],[z,x]\,\)の値,

\(\dim L’\,\)の列は\(\,\dim L’\,\)の値をそれぞれ表します。

まとめ

今回の記事では\(\,3\,\)次元複素リー代数(3-dimensional complex Lie algebra)を解説いたしました。

かなりボリューミーな記事になりました。

次回は\(\,3\,\)次元実リー代数の分類を行う予定なので,楽しみにしておいてください。

もし「説明がわかりにくい」などご要望・ご感想がありましたら,
X(旧:Twitter)で#サイエンティクスでつぶやいていただけると,できる限り対応します。

ここまで読んでいただき,ありがとうございました。

補足:\(\,L_\mu=L_\nu\Leftrightarrow \mu=\nu,\nu^{-1}\,\)

この補足では命題3の証明中で解説しきれなかった

\[L_\mu=L_\nu\Leftrightarrow \mu=\nu,\nu^{-1}\]

を示します。

初めに\(\,L_\mu,L_\nu\,\)のそれぞれの基底\(\,\{x_1,y_1,z_1\},\{x_2,y_2,z_2\}\,\)を命題3で存在が言及されている「良い」基底に固定しておきます。

つまり\(\,\operatorname{ad}z_1,\operatorname{ad}z_2\,\)が\(\,\langle x_1,y_1\rangle,\langle x_2,y_2\rangle\,\)上でそれぞれ

\[\begin{pmatrix}1&0 \\ 0&\mu \end{pmatrix},\quad \begin{pmatrix}1&0 \\ 0& \nu\end{pmatrix},\]

の対角行列で表現されるような基底ということです。

このとき\(\,(L_\mu)’=\langle x_1,y_1\rangle,(L_\nu)’=\langle x_2,y_2\rangle\,\)となることに注意しましょう。

まずは簡単な\(\,(\Leftarrow)\,\)からです。\(\,\mu=\nu\,\)のときは自明なので,\(\,\mu=\nu^{-1}\,\)としておきます。

このとき基底に関する交換関係はそれぞれ

\[\begin{align*}[x_1,y_1]&=0, &[y_1,z_1]&=-\nu^{-1} y_1, &[z_1,x_1]&=x_1 \\ [x_2,y_2]&=0, &[y_2,z_2]&=-\nu y_2, &[z_2,x_2]&=x_2\end{align*}\,\]

ですね。

これより\(\,L_\nu\,\)の基底\(\{y_2,x_2,\nu^{-1}z_2\}\)の基底の交換関係を計算すると,

\[[y_2,x_2]=0,\quad [x_2,\nu^{-1}z_2]=-\nu^{-1}x_2,\quad [\nu^{-1}z_2,y_2]=y_2\]

となり,\(\,L_\mu\,\)の交換関係と一致することが分かります。

つまり\(\,L_\mu,L_\nu\,\)の構造定数は一致するので,\(\,L_\mu\cong L_\nu\,\)です。

続いて\(\,(\Rightarrow)\,\)です。同型\(\,\varphi:L_\mu\to L_\nu\,\)を取っておきます。

さて全射より\(\,\varphi(z_1)=\alpha z_2+w \,\,(\alpha\in K,w\in (L_\nu)’ )\,\)と書けます。

同型\(\,\varphi\,\)より\(\,(L_\mu)’\overset{\varphi}{\cong} (L_\nu)’\,\)が従うので\(\,\alpha\not=0\,\)です。

すると任意の\(\,v\in (L_\mu)’\,\)について

\[[\varphi(z_1),\varphi(v)]=\varphi([z_1,v])=(\varphi\circ\operatorname{ad}z_1)v,\]

と計算できる一方,

\[[\varphi(z_1),\varphi(v)]=[\alpha z_2 +w,\varphi(v)]=(\operatorname{ad}\alpha z_2\circ\varphi)v,\]

とも計算されます。

つまり\(\,(L_\mu)’\)上で\(\,\varphi\circ \operatorname{ad}z_1=\operatorname{ad}\alpha z_2\circ \varphi\,\)が成り立ちます。

これは\(\,\operatorname{ad}z_1\,\)と\(\,\operatorname{ad}\alpha z_2\,\)の表現行列が相似であることを意味します。

よってそれぞれの固有値は一致し\(\,\{1,\mu\}=\{\alpha,\alpha\nu\}\,\)が成り立ちます。

これより\(\,\mu=\nu,\nu^{-1}\,\)が従います。

以上より題意は示されました。\(\quad\square\)

参考文献

  • \([1]\) Karin Erdmann and Mark J. Wildon.“Introduction to Lie Algebras”,1st ed., ebook, Springer London.Published 2006,pp.20–26.